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最高裁判所第三小法廷 昭和30年(あ)3980号 判決

本籍並びに住居

松阪市京町四九番地

靴職人

宮崎こと

谷口恭一

昭和九年九月一七日生

右の者に対する覚せい剤取締法違反被告事件について昭和三〇年一一月一五日名古屋高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人松久健一の上告趣意第一点は、原審において主張なくその判断を経ていない事項に関する主張であつて、上告適法の理由とならない。〔第一審判決が第一事実につき挙示する証拠、ことに警察の捜索差押調書(一五二丁)、被告人供述調書(一五二丁)によれば、被告人は昭和三〇年二月九日大阪市で二ccアンプル入覚せい剤注射液一、〇〇〇本を買い受け翌日被告人の居宅に持ち帰り内一〇〇本を母あきに渡し、残り九〇〇本を被告人の家の所論押収の風呂敷一枚に包み箪笥の抽斗をぬいてその中に詰め、これを隣の谷口増蔵方床下に隠匿したことが認められ、これによれば、右風呂敷包は被告人が右覚せい剤九〇〇本を包み隠して不法に所持する用に供したという事実関係であるから、それ自体犯罪の用に供した物ということができ刑法一九条一項二号によりこれを没収することができること明らかである。論旨引用の大審院判例は従たる物又は附属物に関する場合のものであつて本件には適切でない。〕

同第二点は、事実誤認、訴訟法違反の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三)

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